「奈良人形」または「一刀彫奈良人形」ともいわれる奈良人形は、平安時代後期、春日大社若宮の祭礼に用いられたのが始まりと言われている。春日若宮祭では笛吹笠や盃台に多くの木彫人形が飾られたことから、この制作を専門とする人が現れ、特に江戸時代より「岡野松壽」の一家が代々奈良人形を作り続け、明治時代まで十三代も続いている。
奈良一刀彫を語る上でもっとも重要なことは、江戸時代末期に巨匠「森川杜園」によって、その技術・風格が芸術の域に高められたことであろう。その作品の多くは、東京・奈良国立博物館、東京芸術大学ほか春日大社などに大切に所蔵されている。
素材と道具
素材としては一般的には楠が良く使われます。
左から楠、桂、檜
道具は専用の鑿(上段左から突きノミ・追い入れノミ・丸ノミ・金槌など)
や彫刻刀(下段)です。
彩色は日本古来の絵の具(水干絵の具)、金泥、金箔をつかいます。
水干絵具 (天然の材料を精製したもの)岩絵具(鉱石を砕いて作る) 絵皿と膠
絵筆(たいへん細いものも使用)
制作工程
1、原木に図案を書き込む・・・・・・(バランスをよく考えて)
2、ノコギリでの切り出・・・・・・・ (切り込み過ぎに注意)
3、荒彫り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(大方はノミを使い、少し細かいところは彫刻刀で彫り込む、
この段階が作品のバランスを左右する、一番難しいところ)
仕上げ彫り・・・・・・・・・・・・・・・
(突きノミ、彫刻刀を用いて丁寧に仕上げる。仕上の良し悪
し が彩色の出来に大きく影響する)
4、彩色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(日本画の絵の具を用いて色彩を施す)
書籍名 | 著者 | 発行所 |
---|---|---|
奈良の一刀彫 | 竹林薫風 | 竹林薫風 |
奈良の本 | 中野文彦ほか | 大和地名研究所 |
没後百年:森川杜園展 | 奈良県立美術館 | 奈良県立美術館 |
銕琅の六十年 | 市川銕琅 | 調布美術館 |